古民家風の家
近年、古民家風にしたいと考える人が増えています。どんなに古くても古民家風の家には、逞しく美しい形と時代の流れに揺るがない存在感が人を暖かく優しく包んでくれる雰囲気があります。また古民家のような和風の家は長い年月を得て自然や人の営みなど風土の影響を受けて独特の落ち着きや風格を備えているからです。
古民家風の家の特徴は、その地方の気候風土に根差した庶民の生活や経験・知恵を活かした素朴な構造美にあります。ここでは現在再び注目を浴びている古民家風の構造や表現について見てみましょう。
古民家の歴史
古民家風の原点は竪穴住居におかれますが、その原始的な家が室町時代に至るまで存在していました。江戸時代中期の頃までは掘立柱で土間住まいで、建具はなく壁ばかりの窓なし、開口部にはむしろを敷いただけの家がほとんどでした。
その後、民家も徐々に家らしい様相を呈するようになり、庄屋階級に近い形へと発展していきます。民家が堂々たる風格で造られるようになったのは明治になってからのことです。太い大黒柱や豪壮に組み合わされた梁組・数奇屋座敷など上層階級の家の形が取り入れられるようになりました。現代の古民家風の造りは、こうした原始性と上層階級の家の手法を取り入れた造りになっているのです。
古民家の構造
古民家の構造架構の形を見ると、民家の屋根形は茅葺の合掌造りになっています。中に入ると薄暗い中に高い屋根裏や煙で燻されて黒くなった骨太で粗削りの頑強に組まれた太い柱や梁・差し鴨居・茶褐色や黒光りする板戸・大きな囲炉裏が見られます。
板の間にはゴザが敷かれるなど庶民の生活から生まれた飾り気のないシンプルな構造となっています。
古民家には各地方の気候風土により様々な構造形態があります。例えば、長野県に見られる本棟造りや近畿地方の大和棟は格式重視の形態で、豪雪地方には中門造りや曲屋という形態、四国や九州では土間と居室を一列に並べた形態があります。
古民家風のデザイン
古民家風のデザインで家を造る場合、柱や梁・桁・根太・垂木までも含めて全てがそのままインテリアを形作ることにあります。つまり構造が構成美を形作れば後は間取りから要請される条件や空間上の望ましい形を造り出せばよいのです。
また古民家風のデザインは、その時代の生活や材料によって変化します。伝統に裏付けられながらも現代の品格ある新しい民家風では、昔のように土地独自の生活や建築スタイルではなく、先人たちの知恵や気候風土・習慣を大切にして、そこから生まれた実用的で素朴な美しさと伝統が醸し出す品格を大切に生かすことです。
古民家風の間取り
構造上のデザインと共に古民家を表現する際に欠かせないのが間取りです。和風の家が間取りに直接かかわるのは、床の間や書院・縁側などのような道具立てがあるだけでなく、広がりのある間取りが重要なのです。
部屋と部屋を独立させず、襖や障子など建具の多用によって室内を連結し広々とした空間にするのが古民家風の間取りの特徴です。部屋を随意に連結することも遮断することもできる可変性は、空間に多様性を与えて視覚的な変化を作り出すだけでなく、広がりのある間取りは伝統的な和風の生活にとって必要不可欠なのです。