和の素材
和の素材は和風の住まいを感じさせる空間作りに欠かせない構成要素の一つです。そもそも素材は、その質感や仕上げ加工・組み合わせによって様々な見え方と効果を発揮します。単に木や土などの素材を使用したから和の住まいになるわけでなく素材の機能性を十分に発揮しながら自然との調和を感じるものなのです。ここでは和風の家を表現するための昔ながら使われる「和の自然素材」を紹介します。
素材の伝統
現代においては、時代の変化と共に純粋な和の素材は少なく「和風」という表現を利用した素材が多いのが現状です。純粋な伝統を受け継ぐ和の素材の中でも日本で生産されているものは非常に少なく、本物の材料が大変高額で入手が困難なことから実際の建築現場で使用されるのは珍しいとさえ言われています。
つまり今の時代においては、本当の意味での昔から受け継がれた伝統の和の素材を使用することが少なく、形だけのまがいものが多いという専門家もいるほどです。和の素材に求められるのは、古き良き伝統を守りつつ本物にこだわりながら新しい技術を取り入れてでも残していく活動が必要不可欠だといえるでしょう。
自然素材の効果
木・紙・土・石などの和の自然素材は、デザイン面だけでなく機能面にも注目して活用したいものです。
例えば家の中に多く使われているふすまなどの紙には調湿性があり、壁に使われる漆喰は防水性だけでなく臭いの吸着効果などの特性を持っています。
最近では健康素材の一つでもある珪藻土には住まいによい効果を与えることから多く用いられています。
また有害素材の排除と正常化の点では、珪藻土クロスや植物性などの天然塗料など和の自然素材を生かす加工製品も増えてきました。天然塗料は化学物質を含まないだけでなく木の持つ調湿効果も損なわずに仕上げることが可能です。また有害物質や臭いの吸着に重点を置いた新しい製品も次々と開発されています。
和の自然素材の活用
住まいで自然素材を使う場合は、使用する箇所との相性を考えることも必要です。一般に自然素材は新建材に比べると施工の精度は悪くなります。木材であれば反りが発生し、自然紙であれば縮みや変色など時間の経過によって気になる部分が出てくることがあります。
つまり自然素材は傷や汚れが付きやすく、手入れに手間がかかるものです。和の住まいで自然にこだわるなら、そうした点を踏まえたうえで経年変化を楽しみながら日頃のメンテナンスを欠かさない心構えも必要です。このことから和の自然素材の優れた効果を活用するには適材適所で用いることを忘れずに。
調湿する素材
湿気を防ぐには換気をよくすることが基本ですが、建物に使われる自然素材にも調湿機能を持つものがあります。調湿とは空気中の湿気が多いときには内部に水分を取り込み、乾燥しているときには内部の水分を吐き出して空気中の水分量を調整する機能のことです。
現在、様々な和の自然素材が注目されていますが、なかでも木は高い調湿機能を持っていることで有名です。たとえば桐ダンスには、調湿・断熱・抗菌などの効果を生かして着物や巻物をよい状態で長く保存することが可能です。このように家にも木質素材を多く使うことで室内空間の湿度の変化を抑えてくれるのです。