土壁

漆喰・珪藻土・聚楽土

土壁について

従来の日本家屋では吸放湿性に富む土を材料とした日本壁を用いていました。なかでも土壁の代名詞といわれる聚楽土・漆喰・珪藻土は木材同様、日本の気候風土に合った自然な素材です。ここでは土壁としてを利用される素材を見てみましょう。

土壁に使われる土

この土壁に使用する土は日本全土で採取されますが地域によって品質に差があり、上質のなものは京都府伏見の「稲荷山黄土」兵庫県淡路島の「淡路浅葱」など産出される地域の名前で呼ばれています。また「聚楽土」は聚楽第付近で摂れた良質の土で書院や茶室などで広く使用されるうちに、黄褐色の土壁にわずかに黒点や錆が出た仕上げを「聚楽」や「本聚楽」と呼ぶようになりました。

現在では他の土地で採取した土を配合して作られたものが多く、色によって本聚楽(茶褐色・灰褐色)黄聚楽・白聚楽などがあります。また上記以外にも大阪赤土・京錆土など、有名な焼物の産地には良質な土があるのが分かります。

伝統的左官仕上げ

土壁の仕上げ

日本の伝統的な土壁や漆喰壁は小舞竹と呼ばれる細い割竹を立て横に並べ縄や藁などを巻いて格子状にした下地に下塗りを重ねて、左官職人が練り上げた素材を上塗りして仕上げます。

一般住宅用の仕上げとしては、各地で採れる様々な種類の土に糊を混ぜてこねた素材を使った糊仕上げや、糊を使わずに本聚楽や今治黄土に水だけを加えこねた高級な仕上げ方法があります。


しかし現在では伝統的な高い施工技術を持つ職人も少なく、手間と時間がかかる仕上げよりもラスモルタル下地に調合済みの材料を塗る方法が主流です。また内装には本物の京壁や聚楽壁・砂壁に見える繊維壁塗りや吹き付け仕上げがあり、和室以外にも玄関・廊下・居間などの壁にも使われています。

珪藻土

珪藻土はプランクトンのし甲斐が海底に蓄積してできた土です。この珪藻土の粒子には1ミクロンにも満たない孔が無数にあり、従来の土壁よりはるかに高い保温・断熱・調湿・調温・吸音・脱臭・防虫性などの効果以外にも、化学物質を吸着して室内環境をきれいにする効果があります。ただし、珪藻土は吸湿性が強いので雨のかかる外壁で使用するとひび割れ・剥離・ムラがでることがあります。

それでも樹脂やセメントを含まない自然素材の珪藻土は、安価で伝統的な左官工法なのに水で練るだけで様々な下地に塗ることができます。最近では珪藻土を使ったボードや壁紙も作られ、多彩な色も揃えられているので室内空間に合った表情を表現することもできるようになっているのも人気の理由になっています。

漆喰壁

古くは平安時代から存在した漆喰は消石灰に砂・糊・麻スサ・紙スサを混ぜたもので、左官仕上げのコテで磨くと柔らかな艶により日本壁本来の味を出します。

日本の真壁工法の一つである真っ白い「漆喰壁」は、健康上の問題や優れた気品のある美しさなどから最近再び人気を集めています。ただし最高の技術を必要とする左官仕上げなので職人の技量が問われます。漆喰のなかでも土佐漆喰はひび割れがしにくく、対候性や耐久性に優れた性能と美しさで知られています。水や湿気に強く仕上がり当初は薄黄色で時間と共に卵の殻のような色の壁になるのが特徴です。

大津壁

大津壁は漆喰壁の一種で、白土・浅葱土・黄土・赤土など色土に牡蠣灰を主材に麻スサや紙スサを混ぜて糊を加えず水で練ったもので、滋賀県大津の白土が特に有名なことから「大津壁」と呼ばれています。土壁が土の粒子やスサの素朴感を強調しているのに対し、大津壁は色土の色彩と漆喰の光沢感を併せ持った美しい平滑な壁仕上げで選された雰囲気が漂い、漆喰壁以上に高級感があります。

琉球漆喰

通常、内地では高い防火性・防音性・遮光性を持つことから家屋の壁材などに使われる漆喰ですが、沖縄の方言で「ムーチー」と呼ばれる琉球漆喰は屋根瓦を葺く際の接着剤として利用されています。この琉球漆喰は生石灰に発酵させた稲藁と水を混ぜて作られ、弱アルカリ性の性質からカビやダニの発生を抑制し優れた調湿機能を持のが特徴です。また近年では、その素朴な風合いが見直され家屋の壁材として利用されることも多くなっています。

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